八つ墓村

 ミリオン出版から刊行された蜂巣敦著『「八つ墓村」は実在する』を読んだ。
最近、実話系の雑誌などで横溝正史著「八つ墓村」のモデルとなった「津山30人殺し」が起こった岡山県津山市の山村を訪ねる企画をよくやっている。
 実はオイラも草思社から出たノンフィクション、筑波昭著「津山30人殺し」を読んで感動して、今からちょうど10年前に事件現場となった山村、津山市西加茂村大字行重貝尾を訪れたことがある。年明け間もない1月の雪が積もる山村は、外には誰ひとりいなく閑散としていて、民家の裏にある墓の、「昭和13年5月21日没」という墓石に刻まれた文字を見てなんともいえない気分になったものだ。雪の山村を隅から隅まで見て回り(単に民家と畑があるだけなのだが、、、)、最後に犯人の都井睦雄が自殺したという坂の頂上まで行って、写真を撮りまくった。不思議なこともあった。乗ってたレンタカーのエンジンが突然かからなくなったり、津山の駅でカラスが大量発生して(まさに八つ墓村!)、KIOSKのおばちゃんが「うわ〜、こんなの珍しいなあ」って驚いたり、、、。
 訪れたのは1月15日の成人の日(結婚記念日でもあった)の祝日から2日間。当時は祝日は金融機関も休みで金が下ろせず(後になって気づいた、、)、帰りの交通費がなくなってしまい、クレジットカードでもう一泊するかなんて考えてたが、結局何とか金を工面して東京に帰った。途中の新幹線内でウチのカミさんがすやすや眠ってて、パッと起きて「今大きな地震の夢を見た」と言ったのをはっきり覚えている。
 翌日、1995年1月17日、阪神大震災、、、もう一泊してたら帰れなかった、、、
都井睦雄のたたりじゃ〜って思ったよ。

横溝正史の「八つ墓村」は3回ほど映画化されているが、一番面白いのは野村芳太郎監督のもの。金田一耕助渥美清が演じている。尼子の落武者のたたりが全面に出ているが、決して霊現象なんてもので怖がらせようというくだらないトンデモ的な描き方ではなくて、あくまで人間の情念がテーマである。横溝正史のミステリーは全て人間が主人公、だからこそ恐ろしい。「げに恐ろしきは人間なり、、、」