カミさん、壊れる...

平成7年に関係被害妄想、作為体験、幻聴などの症状により、統合失調症(当時は精神分裂病)と診断され入院して以来、これまで何度か幻聴に支配されることはあったが、投薬と休息もしくはデイケア通いにより、早期に回復してきた。しかし、今回ばかりは入院以来の壊れ方となってしまった。

まあ、落ち着かない環境(俺のせいだが...)とヘルパーという激務(彼女にとっては)にストレスがたまり、自分でもキャパを超えてしまったようである。ボーっとしてしまうため、いつからか薬も自分で減らしていたようだ。

行きつけの病院に連れて行き、リスパダールジプレキサと薬を増やしてもらったが、ひどくてパニックになると、「大丈夫、大丈夫なの!」と叫んで、なかなか自分で薬を飲まない。なだめすかしても、怒っても、脅してもダメ。しかたなく液状のリスパダールや粒をつぶして飲み物のなかに入れたりして、だましだまし飲ませている。それでも落ち着くと自分から「薬飲まなきゃね」と飲むんだが。本当はアナデポ注射が一番効果的なのだが、本人が注射は頑に拒否してしまう。

今は、「疲れた」を連発し、寝室に閉じこもり、自閉や意欲の極端な減退を伴う「残遺状態」となっているが、たまに呼びかけても薄目で無表情となってる姿を見るのは、夫としてはとても辛い。もう人格崩壊に陥って立ち直れないのじゃないかと不安になり、いてもたってもいられなくなる。一番辛いのは、「あなたのペースに巻き込まれ、引きずられている」「あなたは私を貶めている」「他の人に私の悪口を言いふらしている」と身近にいる俺を敵視することだ。統失は無理がたたって主体性が乏しくなっていくので、まわりのペースがどんどん速くなっていくと感じ、自分がなくなっていくとの恐れを抱き、「自分のペースが保てない」などと考えてしまう。そして、そのうちに「やっぱりついていけない」と無力感に陥り、絶望的になって閉じこもってしまうのだ。

一定時間睡眠をとった後は、ゆっくりだが、自分で起きてきて、しゃべりかけるとマトモな会話をするときもある。

俺もイライラして、いろいろと話す(説得する)が、もともと病気で幻聴に支配されているわけだから、まともな意見を期待する方が間違いだ。それでも何とか自分を取り戻してくれるかなと期待を抱いてマジメに話しているわけだが。

もう発症して16年目になるわけで、この病気に関しては、いろいろと文献にも目を通し、わかっているつもりであるが、やっぱりなかなかマニュアル通りの対応とはいかないものだ。今回は俺もかなり疲れた。

介護する側があせってパニくると、それが患者に伝わり、ますます不安にさせてしまうので、なるべく普通に接することが大事だ。俺も心配と不安のストレスでまたパニック障害が再発してしまう。あとは本人が病識を持ち、自分で自分を組み立て直す、つまり自立を促すために、ある程度距離を置くことである。本人の自立する意志を尊重し、長い目で見るゆとりを持たないと。なぜなら本人は周囲のペースに巻き込まれていると感じているわけだから。以前、統失の家族会などに参加したこともあるが、ほとんどの身内が、手取り足取り患者にべったり過保護の相互依存で、自立を抑えているように思えた。

カミさんは意外と理解が速いので、早く自分で自分を立て直すことを見守るしかないな。辛いけど...

統失の最大の敵は、不安、孤立、過労、不眠。これをなるべく軽減し、あとは投薬を欠かさないことである。



今のカミさんに捧げよう。
http://www.youtube.com/watch?v=l8KHnIQ8mjo